漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
「何言ってんだ?ここには俺達しかいねーよ?」
黒いフードの中のリーダーらしい男が、わざとらしく「なぁ?」と投げかけると、他の奴らもわざとらしくクスクスと笑いながら頷く。
「白々しいっ!さっさと出せっつってんだよっ!!」
「太一」
今にも相手に飛び込んで行きそうな太一を、恭が冷静に制止する。
「調べはついているんです。もう一度言います。余計な体力は使いたくない。そこを通してもらえませんか?」
恭がただ冷静にフードの男を見据えているだけなのに、男の顔は緊張感に染まっていく。
「…やだと言ったら?」
コンッ!と一度音を立てて鳴り止んだ金属音。
辺りはシーンと静まり返った。
あ。
この感覚。
恭と一緒にいるようになって分かってきた、
恭の周りを取り巻く空気が変わる、この瞬間。
「“やだ”?」
恭は、額に手を当てクスクスと笑う。
その乾いた笑いが止まると、そっとその手を下ろした恭の瞳は、鋭い光を放っていた。
「ほざけ。てめぇらにその選択肢はねぇよ」
低く、冷たく響く恭の声。
あぁ…これは…
「完全にスイッチ入ったわね。ただでさえ、イラついてんのに…早くどいておけばいいものを」
あたしの隣で聖也さんが溜息をつく。