漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
男達は、恭の一変した様子に息を呑んで一瞬たじろぐ。
そこに追い討ちを掛けるように、恭が一歩一歩男達に向かって歩き出す。
「退け。」
黒いオーラを纏った恭は、リーダーの男の前に立つと、頭一個分は違うであろうその身長差で、男を冷ややかに見下した。
正直、遠くからそれを見ているあたしでも、背筋が冷たくなるほどの空気。
眼前でそれを見ている彼らはたまったものではないだろう。
現に、さっきまで調子に乗った様子だった男達は、すっかり蛇に睨まれた蛙状態だ。
「…クソがっ…!なめんなよっ!!!」
恐怖に耐えかねてか、とうとう男が鉄パイプを振り上げる。
こっちは丸腰なのに卑怯だ!
「…恭っ!!!」
ブンッ!という空気が切れる音。
恭は、男が振り下ろした鉄パイプを優にかわす。
ホッとしたのも束の間、堰を切ったように男達が恭に襲いかかっていく。
恭は、その全ての攻撃を華麗にかわすと、最後にかわした男の鉄パイプを器用に蹴り上げて、自分の手中に収めた。
その一連の動きが、あまりにも優美で、
あたしは不謹慎にも胸が高鳴ってしまった。