漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】


「…っでも…」


「潤。お前みてぇに最初から大切なもんがあるような奴にゃ、この世界は似合わねぇよ。

お前は、堅気の世界がよく似合う」


潤は何かを言いたそうにするが、ぐっと口をつぐんで、ゆっくりと頷いた。




この人…本気で言っているの…?


彼の様子を見ている限り、嘘を言っているようには思えない。




だけど…


「それは…本当に信じてもいいんですか?」


つい疑いの目を向けてしまう。



私は、ヤクザなんて知らないけど沢山の裏切りのある世界だとは知っている。


こんな口約束、簡単に破ってしまえるんじゃないの…?


それにこの人は、葛原の父親だ。


正直、そんな所でも偏見で見てしまう。



「信じても、問題ない」



そんな声がして、恭に顔を向ける。


「ヤクザは“約束”は破れない」


恭の口振りは、まるでヤクザの世界をよく知っているようだった。


胸騒ぎがした。


ううん。


あたしは確信していたのかもしれない。


「何で…恭がそんな事を言うの?」


恭は、影のある瞳を落とす。


そして、ゆっくりとあたしに視線を戻すと口を開いた。




「俺も葛葉と同じ、ヤクザの組長の息子だからだよ」






驚きは少なかった。


< 312 / 347 >

この作品をシェア

pagetop