漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
まぁ、無理はない。
ただでさえ弟の事でテンパってたのに、次は恭の事だろ?
きっと脳みそがショートしかけてたに違いない。
「そりゃ、直ぐには受け入れられるわけないよ。恭とこの先ずっと一緒にいるつもりなら、尚更見て見ぬフリは出来ない事なのに、それをあのバカ恭は隠してたんだから…」
「あたしが茉弘の立場ならぶん殴る!」と言って百合はテーブルを強く叩いた。
「それだけじゃねーよ。組長の息子っつったら、言えば恭は次期ヤクザの組長って事だろ?
茉弘ちゃんとずっと一緒にいるつもりなら、茉弘ちゃんは堅気ではいられねぇって事だ。
あいつ何考えてんだよ…。何でそんな大事な事、茉弘ちゃんにも俺らにも黙ってたんだよ…。
太一は…知ってたんだろ?」
「まーな。お前や春馬より俺のが恭と付き合いなげーからな。
百合も恭に許可はとって、伝えてはあったけどな」
直と春馬の表情があからさまに曇ったのを、俺は見逃さなかった。
「何?あいつに秘密にされたのが、そんなに納得いかねぇ?」
「ちがっ…!そういうわけじゃねーけど…っ」
「信用されてないんだと思うと、俺らもどう恭を信じていいのか、分からなくなる。…てのが本音かな」
春馬が百合のせいで散らばったトランプを集めながら。力なく笑う。