漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】

まぁ、無理はない。


ただでさえ弟の事でテンパってたのに、次は恭の事だろ?


きっと脳みそがショートしかけてたに違いない。


「そりゃ、直ぐには受け入れられるわけないよ。恭とこの先ずっと一緒にいるつもりなら、尚更見て見ぬフリは出来ない事なのに、それをあのバカ恭は隠してたんだから…」


「あたしが茉弘の立場ならぶん殴る!」と言って百合はテーブルを強く叩いた。


「それだけじゃねーよ。組長の息子っつったら、言えば恭は次期ヤクザの組長って事だろ?
茉弘ちゃんとずっと一緒にいるつもりなら、茉弘ちゃんは堅気ではいられねぇって事だ。

あいつ何考えてんだよ…。何でそんな大事な事、茉弘ちゃんにも俺らにも黙ってたんだよ…。

太一は…知ってたんだろ?」


「まーな。お前や春馬より俺のが恭と付き合いなげーからな。
百合も恭に許可はとって、伝えてはあったけどな」


直と春馬の表情があからさまに曇ったのを、俺は見逃さなかった。


「何?あいつに秘密にされたのが、そんなに納得いかねぇ?」


「ちがっ…!そういうわけじゃねーけど…っ」


「信用されてないんだと思うと、俺らもどう恭を信じていいのか、分からなくなる。…てのが本音かな」


春馬が百合のせいで散らばったトランプを集めながら。力なく笑う。
< 318 / 347 >

この作品をシェア

pagetop