漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
やっぱり茉弘は強いな…。


こんな話を聞いても、彼女の瞳はあの闇には染まらないんだ。


「目標を持ったものの、その時まだ俺はようやく中学に上がったばかりで、その術を知らなかったんです。ただ一人であの地区に挑む事ばかりを考えていました。だけど、そんな簡単にいくはずはない。まぁ、そのもどかしさもあってか…その…」


「とにかく、喧嘩ばかりしてたのね」


じろっと横目で見てくる茉弘に、居心地の悪さを感じながらも、不思議に思う。


「…あれ?俺この時代の話、した事ありましたか?」


「ううん。前に、柚菜さんと太一に聞いた事あるんだ。」



あの2人……。


一体どこまで俺の黒歴史を話したんだ?


考えただけで背筋がゾッとする。



茉弘には、あまり俺の黒い部分は見せたくない。


茉弘が信じられないとかそういうんじゃないんだ。


ただ、茉弘のこの綺麗な瞳に映る俺が黒いものではありたくないと願っているだけ。


茉弘にとってのヒーローでありたい。


茉弘には全力で、優しい人間でありたい。



と言っても、俺の中で飼ってる黒の部分は時として溢れ出てしまうわけで…。


元々黒の部分が多いからな。


仕方ない。


いくら敬語で取り繕った所で、それが消えるわけないのにな。


だけど、俺にとって敬語は唯一のストッパーで、黒の部分を溢れさせない為の堤防になっているから、


茉弘の前だけでは出来るだけこうしていないと、自分を見失いそうで怖かった。


絶対に彼女を怖がらせるような事だけはしたくないから…。

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