漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
分かっていたのに、考えないようにしていた。
俺は、親父達とは無縁の世界で生きている気になっていたんだ。
ホント…自分の馬鹿さ加減に腹が立つよ。
きっと今この瞬間、すべてのツケが回ってきているんだろう。
「百合や春馬、直にも出逢って、幹部以外の奴らも俺なんかについて来てくれて、どんどん守らなきゃならないモノが増えていった。
…そして、茉弘。君に出逢いました。」
今、茉弘を見る俺の顔は、どんな顔をしているかな。
きっと、愛しい気持ちが溢れているに違いない。
だってあの瞬間は、俺にとって奇跡以外の何物でもなかったんだ。
––––少し怯えた様子で、
だけど、強く真っ直ぐに俺を見るあの瞳。
俺は、あの瞬間から君に囚われたんだ。
きっと俺はこの先何があろうと、君に出逢ったあの瞬間を忘れる事はないだろう。
「茉弘に出逢って、今なら少し親父の気持ちが分かる気がするんです」
俺を一心に見詰める茉弘のその頬に、そっと触れる。
茉弘は何かを悟っているのか、その目は小刻みに揺れている。
「危険な事が沢山ある世界で、守れる保証もないのに大切な人と居ることを選んだ気持ち…」
頬に触れていた手を茉弘の首の後ろに回して、引き寄せる。
「…恭……」
そして、彼女を強く抱き締めた俺は痛い程実感するんだ。