漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
「恭ちゃんね、昔は今みたいな感じじゃなかったの。」
「?」
「想像つかないかもしれないけど、今みたいな穏やかさなんて欠片もなかったんだ。
口は物凄く悪いし、目付きも鋭くて、喧嘩ばっかりしててね。誰も寄せ付けようとしない子だったの。」
「うそ……。全然想像つきません。
だって、普段の恭は穏やかで……敬語で喋ったりしてるくらいで……。」
「そうだよね。でも、時折見せるでしょ?ブラック恭ちゃん。」
ふと、前に不良グループに襲われた時の事を思い出す。
荒い口調。
いつもより低い声。
鋭い目付き。
黒い雰囲気。
いつもの恭とはまるで違う恭の姿。
そこで、ずっと疑問に思っていた事を柚菜さんにぶつける。
「恭って……もしかして、本当に二重人格とかなんでしょうか?」
「へ?」
柚菜さんは、目を見開いてあたしを見る。
あたしは、眉間に皺を寄せて真剣な眼差しで柚菜さんを見詰める。
「ぷっ!あははははは!!」
それを見た柚菜さんは、急に吹き出して声を上げて笑い出す。
何だか、とてつもなく恥ずかしいんだけど……。
あたし何かおかしな事言ったかな?
真っ赤になっているあたしに、柚菜さんは「ごめんごめん!」と言って涙を拭く。