漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
本当。
世話の掛かる姫さんだわ。
煌龍の地区内の駅に着く。
さすがに百合以外の女をバイクの後ろに乗せる気にはなれなくて、わざわざ電車を使う俺。
これだから尻に敷かれてるとか言われるんだよな。
俺は、駅から来た方向を見渡す。
昔はここまで来るのにも気を張ってなきゃだったのに。
まだ粗はあれども、平和になったよ……この地区は。
あいつは、言った事を絶対にやり遂げる奴だもんな。
ふっと思わず笑みが溢れる。
そして、ポケットに入っていたタバコを取り出して、口に加える。
まさか、あいつが姫を作るなんて思わなかったけどな。
あいつの心の傷は、俺が一番良く知ってる。
だから、絶対に近くに女を置くことなんてないと思ってた。
それがまさかな。
あんな根暗そうなちんちくりんに惹かれるなんてな。
世の中分かりませんわ。
タバコをくわえたまま、空を見上げる。
すっかり空が高くなった。
秋空だ。
もうすぐ日が落ちてくる。
でも、あいつに心許せる奴が出来たのは、正直嬉しいんだ。
寝てる時や自分に隙が有る時は、絶対に人を寄せ付けなかったあいつが、まさか寝顔を見せられる奴が出来るなんてな。
最初は少し嫉妬したわ。
あいつには絶対言わないけどな。