漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
「そんな茉弘が、愛しくて堪らなくなった。ほっておけない。離れるなんて、出来ない……。」
あたしを抱き締める恭の腕に力が籠る。
「……でも、あたしと居たら恭辛いでしょ?嫌な事を思い出したり、不安になったり……。」
「……そうだな。それは、そうかもしれない。
茉弘が母さんのように犠牲になるんじゃないかとか、俺は親父みたいに大切な物を守る事が出来ないんじゃないかとか、不安で堪らなくなる。」
心なしか、恭の体が小刻みに震えている。
「……でも……」
恭は、両手であたしの頬を包み込む。
「茉弘が側にいない方が、もっと辛い。」
「恭……。」
あたしは、恭の手に自分の手を重ねる。
「初めて会った時から、惹かれてた。」
あたしの額に恭の額が触れる。
「強がりな所も。俺を見る強くて真っ直ぐな目も全部……」
あぁ……
「好きだよ。」
あたしは、恭の側に居たい。
例えこの先、どんな運命が待ち受けていようとも、あたしはこの選択を後悔する事なんか絶対にない。
そう心から思うから……。
「あたしも……好き……。」
優しく微笑む恭。
もう寂しそうな笑顔なんかじゃない。
あたしの見たかった、恭の笑顔。