漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
「何だ急に。……知ってるわ。俺はよく恭と来てたからな。」
「うん。さっき、ご馳走してくれてね。……そっか。よく恭と来てたんだね……。」
ん?
何だこいつ。
妙にしおらしく、頬なんか染めやがって。
「何だよ?」
「……ん?いやね。いいなぁって……。」
「?」
「柚菜さんも、理さんも、太一も……その……昔の恭の事、知ってて。」
「は?」
「恭と太一の話、聞いたよ。煌龍が出来るまでの話も。
何か正直、感動した。恭と太一の絆って凄いよね。」
そう言って、こいつはさも嬉しそうに笑う。
いつもと違って、随分素直でやり辛い。
柚菜さんと理さんは、カウンター越しに微笑んでる。
「恭の二重人格の謎も解けたしね。」
「……あぁ。あれね。」
恭は理さんに言われてから、自分の話し方をかなり試行錯誤してた。
だからといって、無意識のものって直すの難しいんだよな。
煌龍を作るにあたって、恭はこれが一番辛かった事らしい。
それで、結局行き着いたのが"敬語"だった。
「そういえば、しばらく誰に対しても敬語使ってたけど、いつの間にか敬語なしでも柔らかい言葉を使えるようになってたな。
今じゃ割りと使いこなしてるし……。
まぁ、たまにコントロール効かないみたいだけどな。」
「…………。」
「どうしたんだよ?急に黙って。」
「……恭……あたしには、ほとんど敬語使うんだよね……。」
??
そうだったっけ?
何か確かにこいつの前では、そうだった気もしなくはない。