漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
---ゴンッ。
「おまっ……!何してんだよ!?デコすげぇ
音したぞ!?テーブルに傷が付くからやめろっ!」
あ。
やべ。
ついテーブルの方を心配しちまった!
睨んでる。睨んでる。
「太一はいいな。恭に素出してもらえて…………あたしなんて、一応恭の彼女なのに、敬語って……。
壁作られてるのかな……。」
テーブルに突っ伏したまま、そんな事を言うちんちくりん。
……こいつ。
俺に嫉妬してんのか?
「アホか。」
「……なによ。」
「ちげーだろ。あいつは、お前だから敬語使ってんだろ。」
「?」
「あいつは、とっくに敬語なんて使わなくても要領よく言葉使い分けられんだ。
お前の前だけ敬語なんておかしいと思わねぇの?」
ちんちくりんは、
「何が?」
とまるで分からないと言うように首を傾げる。
頭いい奴って、どうしてこうも鈍いのか……
「お前を恐がらせないように、傷つけないように、大事に大事に扱ってるんだろ。多分あいつも無意識にな。
あいつにとって、敬語は最上級の優しい言葉なんだよ。」
恭が散々試行錯誤して行き着いた、人を"威圧しない"、"恐怖心を与えない"色の言葉。
あいつ、どんだけこのちんちくりが大事なんだよ。
あんなに器用な奴が、どうしてこの女の前ではこんなにも不器用になるのか……。