漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
「じゃあ、またね。
寒いから、もう倉庫に入るんだよ?」
そう言って恭は、もう一度あたしの頭を撫でてから、私に背を向けた。
あ……ま、待ってっ!!!
あたしは、咄嗟に恭の服の裾を掴む。
「どうしたんですか?」
驚いた様子の恭。
やだあたし!
何してんの!?
顔に一気に血が上り、上手く言葉が出てこない。
「あ、う、あ、これっコ、コート!」
「いいですよ。俺寒くないんで、茉弘着てな?」
「あ、いや、うん。あ、ありがと。あ、でも違くて……」
それでも手を離せずにいるあたし。
だってこの手を離したら、また次に恭と会えるのはいつ?
本当はもっと……一緒に居たい……。
なんて、そんなのワガママだけど!
でも……
「茉弘。」
恭の腕があたしの体を包み込む。
その温もりが、あたしの冷えた体を温めていく。
「ダメじゃんそんな顔したら。せっかく我慢してたのに。」
そう言うと恭は、少し体を離し、あたしの額に自分の額をコツンと当てる。
「分かってる?俺は、茉弘に触れたくて仕方ないんだからね?」
「!!!!」
触れたいって!?触れたいって!!?
恭があたしの頬にちゅっと口付ける。
「ちょっ!恭っ!誰かに見られたら……」
恭は、あたしが言うのを無視して、今度は瞼に口付けをする。