漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
「……え?」
「あんたの御披露目の時、あたしもあそこに居たのよ。」
聖也さんは、苦笑いを浮かべる。
「あんたの暴走具合には、本気で呆れたわ。」
う"……
あれを見てたのか……。
思い出しただけで、顔から火を噴きそうなくらい恥ずかしい。
そりゃ、聖也さんでなくとも呆れますよ。
「……でも、カッコイイとも思ったわ。
信用に値する子だともね。」
「……聖也さん……」
頬を緩ませ、微笑む聖也さん。
いつもの気の強そうな顔とは裏腹に、優しさが滲み出ている笑顔。
やっぱり優しい人なんだ……。
「ま。恭を悲しませた時は容赦しないからねっ!
今は黙って見ててあげる。
頑張んなっ!」
あたしにビシッと指をさし、そう言い残して恭の所に駆けていく聖也さん。
「茉弘っ。あんまり離れちゃダメだよ。」
恭があたしを呼ぶ。
「…………う、うん!今行く」
あたしは、そこに駆けていく。
聖也さん……あたしが恭を傷付けたりしないってどういうこと?
そうこうしているうちに、恭を裏切る時は刻々と近付いてきている。
恭を傷付けないなんて選択肢があるの?
あたしは、思い切り頭を振る。
そんなのあるわけない。
例えあったとしても、そんなの葛原が許さない。
きっと、潤の笑顔を取り戻すことは出来なくなる。
あたしには、恭を裏切る道しかないんだ ──。