カタブツ上司に迫られまして。
とりあえず、お給料を貯めなくちゃ。

せめて敷金礼金を払えるくらいには貯めないと。

「いい部屋ないかなぁ」

「今時期はあまりいいのないよねー」

ふんふんと同僚の話を聞きながら食堂に向かうと、もの凄い勢いで加代子が近づいてきた。

「由貴! あんた無事なの? ちょっと借りるわよ!」

彼女の剣幕に引きつつ、同僚たちは頷いて、私を置いて食券を買いにいった。

見捨てられた気分になるのはどうして?

「加代子~。私はお腹が空いたんだけど」

「スペシャルAランチをおごってあげるわよ」

一日50食限定のAランチの食券を見せつつ、ランチの列に並ばされる。

「よく買えたね……」

「走ったわよ。食べたいし」

それから二人でスペシャルAランチのお盆を持って、席についた。

スペシャルAランチって初めて見たけど、すごいボリュームと豪華さ……

でもこれは、女子のランチではない気がする。

「それで、火事で焼け出されて課長の実家にいるって?」

さっそくサラダをもりもり食べていた加代子は、真剣な目で私を睨んだ。

「どうして、課長の実家なのよ。何で連絡して来なかったのよ」

「成り行きで……後は色々と」

「遠慮せずに家に来れば良かったのに」

最初は思わない訳じゃなかったんだけど、冷静になると気が引けた。

「課長の所は実家だし。広いし、お母さんいい人だし」

「課長のお母さんがいい人なの?」

その驚きはどうかと思うけど、癖は強そうだけどいい人だと思うな。

昨日は料理を教わった。大根は一度、米の磨ぎ汁で煮た方が、えぐみが減って甘く茹で上がるって初めて知った。

そして、それ以外は、間借りしている部屋にこもっていたりするけど……

「どっちにしても、何かあったら頼ってよね!」

頼ってよね……か。
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