カタブツ上司に迫られまして。
十日目
*****


休日の土曜日。
いい部屋は無いかと、間借りしている部屋で不動産検索していたら、いきなり襖がスパンと開いた。

そして、不機嫌な課長を見上げて、目を丸くする。

「鳴海。いい加減にしろ」

あれ。私は怒られるような事をしたかなぁ?

火曜から金曜まで、普通にお母さんに用意してもらった朝ご飯を食べて、会社に行って、仕事をしてから退社して、退社した足で不動産巡りをしていた。

夜遅くなる事もあったから、夕飯はいらないです、と、予めお母さんには言ってあったし……。

仕事中の事……?
いや、でも別に大きなミスをした訳じゃないし、だいたい会社じゃ、課長はいつもの無表情貫いているから、そもそも接点なんてないし。

「今、何時だと思っている?」

いや、そんな大魔王みたいな雰囲気で腕を組まれて凄まれる意味が解らない。

それでも素直にスマホを見て、時間を確認する。

「10時15分です」

「どーして朝飯食わないんだ」

「土曜日だし、疲れたので朝寝坊させて頂きますって、お母さんにはちゃんと伝えて……」

「俺は喧嘩したのかって聞かれた」

目を細める課長にキョトンとする。

はい?

喧嘩? 私と課長が?

「仲良くもないのに?」

「それには反論がある。あれだけことごとく避けられていたら、仲良くなんてなりようがねぇ」

怒ったように言われてギクリとした。

「お袋と楽しそうに話していたかと思えば、人の顔見て部屋に戻る。すれ違えば無視する。なんなんだお前は!」

「なんだって言われましても」

「それが答えか?」

真面目になった顔に、正座をした。

答えも何も……あれだろうか。

笹井由貴になれ問題のことだろうか。

「そんなすぐに答えが出るわけないじゃないですか。短気ですね課長は」

「課長は却下……」

溜め息をついて、課長は襖を開けたまま部屋に入ってきた。

「お前な。せめて普通でいるとかできないのかよ。仕事中は普通のくせに」

出来れば苦労はないから。
< 29 / 80 >

この作品をシェア

pagetop