カタブツ上司に迫られまして。
「だって、あんなこと言われたら、意識しちゃうじゃないですか」

私は自分で自分を正当化しますよ。
だってこの場合、私の反応は普通の反応だと思うの。

「意識してあの反応なら、お前は相当の天の邪鬼だな」

物凄く呆れたような顔をされても……。

それは知らないですよ。

だいたい、あんな事を唐突に言うとか、課長も悪いと思うんだ。

私だって、あんなに唐突じゃなきゃ、もう少し考えるゆとりもあったんだし、もう少し違う対応になったのかもしれないけれど。

それは“かもしれない”と言う仮定の話だ。

「いい部屋は見つかったか?」

唐突に変わった話題と、情報紙を拾い上げた課長に首を傾げる。

「情報紙の情報って、そもそもが古いみたいで、掲載される頃にはその物件が無いのが普通なんだそうです」

ふーんと呟いて、課長は目の前に座った。

「ああ。こういうのは単なる窓口ってヤツか」

「そうなんでしょうねぇ……」

「なら、うちに住み着けばいいじゃねーか。気に入ったみたいだし」

ポカンとして課長を見る。

私、一言でも課長の家が気に入ったって言ったかな?

確かに気に入っているけど、そんな事は言ってないよね。また独り言をどこかで呟いたのかな?

「この間、一人で縁側に座って楽しそうにしてたじゃないか」

言われて赤くなる。誰もいなかったから、伸び伸びしていたけれど、そう言えば課長に見られていたんだった。

「あ、あれは、たまたまです」

「いや。あれが素のお前なんだろうな」

しみじみと言われて、瞬きを返す。

「素っぴんで、寛いで、ニコニコしてて。普段は気張ってるよなー」

そりゃそうだろう。ここは“他人様の家”なんだから、誰かがいると寛げないと思うし。

私の神経、そこまで図太くないですよ?

私をなんだと思っているのさ。

「お前な」

「はい?」

「少し力抜いて生きろ。全部とは言わないから、家の中だけでも抜いてねぇと、そのうち無理がくる」

……それは、課長の持論なんだろうか?

だから、課長は家では力抜いてる?
つまり、いつもは気を張っている?
落差がとっても激しいです。激しすぎませんか?
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