カタブツ上司に迫られまして。
「期待されてるなら頑張るかなー」

いや、頑張らなくていいし。

課長に頑張られると、なんか色んな意味で困りそうだし。

じっと睨むと、苦笑された。

「祐。からかいすぎると嫌われるわよ。貴方、いつもそうなんだから」

お母さんの言葉にキョトンとする。

「課長って、からかうタイプなんですか?」

振り返ると、お母さんもスイカを食べながら頷いていた。

「そうなのよ~。小学生の頃から変わらないのよ~。女の子をからかいすぎて、いつも嫌われるのよ」

「あ。必ずクラスに一人はいますね」

そして、クラスのやんちゃ坊主に任命されるんだ。

うんうん。解る解る。素の課長ってそんな感じかも知れない。

女の子に意地悪するタイプ。

「でも私、初孫を抱けるかしらー」

……そして、課長は間違いなくお母さんの血を継いでいると思う。

目を細めて庭先を眺めると、隣からクククと微かな笑い声が聞こえた。

もう知らないもん。早く部屋を見つけて出ていくんだから。
絶対にこの状態はよくない。全くよくない。

しゃくしゃくと一心不乱にスイカを食べていたら、親子二人で笑っていた。

「お昼は素麺にしようかしら。鳴海さん問題ない?」

「あ。手伝います」

「手伝うって言っても、茹でるだけだから大丈夫よ。休みくらいゆっくりしなさい」

お母さんはスイカを食べ終わり、とすとすとキッチンに向かっていった。

残されたのは課長と私……。

しゃくしゃくとスイカを頬張る音と、微かに吹いた風に流されてときどき風鈴が鳴る。
遠くから蝉の声まで聞こえてきて、夏だなぁって思う。

「鳴海? お前は、もしかして縁側が好きか?」

縁側……縁側ね。うん。好きかも。

「北海道の家って、縁側見たことないんですよねー」

「そうなのか?」

「はい。まぁ、雪が降るからでしょうけど、あってもサンルームとか、ガラス張りですねー」

課長はぼんやりとスイカを食べながら、屋根を見上げ……。

それから、真面目な顔になって私を振り向く。

「この家と俺はセットだ。嫁に来たらお前の家になるぞ?」

……なんだ、その、お買い得的な発想は。
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