カタブツ上司に迫られまして。
十二日目
*****
月曜日。
やっぱり仕事中の課長は、凛々しい顔を真面目に無表情にさせて、姿勢正しく書類決済している。
とてもとても、縁側でごろごろしている人と同一人物だとは思えない。
こうして見ると課長は課長で、これが私のよく知っている課長だ。
そうして見ていたら、バチリと目があった。
「……鳴海。暇なら書類清書頼む」
クリップつきの書類の束を、やっぱり真面目な顔でヒラヒラさせる。
いーえ。暇じゃないですよ。暇じゃないですが、ちょっと観察していたんですよ。
それでも得意の愛想笑いを浮かべ、課長から書類を受け取り、清書を始める。
普段からこんな感じで、気にかけてもらっていたとは全く思えない。
だいたい貴方は“女嫌い”とか言われるほどじゃないか。
その噂って伊達じゃないと思うんだよね。
だって、噂話に耳を貸さない私にまでその話が聞こえてくるんだから。
それもこれも……。
「課長って怖いですよねー。人にもの頼む時くらい、少し表情変えてもいいと思うんです。この間なんて、私が書類の事で確認に行ったら、露骨に嫌な顔をされたんですよー」
……そう言って、余計な情報をくれる中村さんが隣にいるせいでもある。
160センチの私よりも背が低い。
小さな彼女は最近流行りのメイクに凝っているらしい。
まぁ、もともとが可愛い顔だから、なんでも似合うけれど……。
企画部管理部でも監査室は、内部監査のだとか、内部統制だとか、それに関連するシステムの企画などしたり、時としてリスクマネジメントもする部署で、どちらかと言うと堅いイメージがつきまとう。
仕事中は……大まかに課長の真面目な表情もあってか……皆、あまり無駄なおしゃべりもせずに黙々と仕事をしているのに、彼女は少しタイプが違う。
「別に顔で仕事している訳じゃないから。怒鳴りながら仕事頼まれたら、確かに嫌ですけれど」
そんな上司が世の中にいたら、とてつもなく嫌だけれどねー。
「でも、鳴海さんに頼むときだけ、課長は嫌な顔をしないですよね」
小さな呟きに、キーボードを打っていた指が止まった。
……うん? 意味が解らないよ?
月曜日。
やっぱり仕事中の課長は、凛々しい顔を真面目に無表情にさせて、姿勢正しく書類決済している。
とてもとても、縁側でごろごろしている人と同一人物だとは思えない。
こうして見ると課長は課長で、これが私のよく知っている課長だ。
そうして見ていたら、バチリと目があった。
「……鳴海。暇なら書類清書頼む」
クリップつきの書類の束を、やっぱり真面目な顔でヒラヒラさせる。
いーえ。暇じゃないですよ。暇じゃないですが、ちょっと観察していたんですよ。
それでも得意の愛想笑いを浮かべ、課長から書類を受け取り、清書を始める。
普段からこんな感じで、気にかけてもらっていたとは全く思えない。
だいたい貴方は“女嫌い”とか言われるほどじゃないか。
その噂って伊達じゃないと思うんだよね。
だって、噂話に耳を貸さない私にまでその話が聞こえてくるんだから。
それもこれも……。
「課長って怖いですよねー。人にもの頼む時くらい、少し表情変えてもいいと思うんです。この間なんて、私が書類の事で確認に行ったら、露骨に嫌な顔をされたんですよー」
……そう言って、余計な情報をくれる中村さんが隣にいるせいでもある。
160センチの私よりも背が低い。
小さな彼女は最近流行りのメイクに凝っているらしい。
まぁ、もともとが可愛い顔だから、なんでも似合うけれど……。
企画部管理部でも監査室は、内部監査のだとか、内部統制だとか、それに関連するシステムの企画などしたり、時としてリスクマネジメントもする部署で、どちらかと言うと堅いイメージがつきまとう。
仕事中は……大まかに課長の真面目な表情もあってか……皆、あまり無駄なおしゃべりもせずに黙々と仕事をしているのに、彼女は少しタイプが違う。
「別に顔で仕事している訳じゃないから。怒鳴りながら仕事頼まれたら、確かに嫌ですけれど」
そんな上司が世の中にいたら、とてつもなく嫌だけれどねー。
「でも、鳴海さんに頼むときだけ、課長は嫌な顔をしないですよね」
小さな呟きに、キーボードを打っていた指が止まった。
……うん? 意味が解らないよ?