カタブツ上司に迫られまして。
「……ここは」

「確かに、あまり至急で監査が入るようなトラブルは起こして欲しくはない部門ですねー」

私と上野君はぼんやりと、そびえ立つ白いビルを見上げた。

この営業所……とは言っても、どちらかと言うと、うちの会社の物流管理システムを一気に担っている部門ばかりを集めた建物……。
ほぼ全国の支社の物流関連の統括をしていて、ここが止まれば、うちの会社の流通が止まってしまうくらい重要な拠点だ。

「システム系がいかれてるだけなら、直せば良いだけなんだがな」

そう言いながら自動ドアを抜け、課長がそこにいた水色の繋ぎを着た男の人に話しかける。
その人はタブレットから顔を上げにっこりと微笑んだ。

どこか軽そうな印象で話すその人と、課長は知り合いらしい。

しばらく話し込んで、それから上野君が呼ばれて、繋ぎを着た人と一緒にどこかに向かう。

それから課長は真面目な顔で振り返り──

「ファイルを調べるぞ」

たった一言で、めまいがしそう。

それでも歩きだした課長に、溜め息まじりについて行く。

「内容を伺っても?」

「システム上の受注数と、実際の出荷した商品の数が合わないらしい」

受注数と出荷数? それって合わなかったらそもそも経理から確認されそうな事項じゃない?

「最初は単なる誤差だと思ったそうだ。実際の出荷した商品数と伝票の数値は合っていた……らしい」

「はぁ……」

「つまりは、受注とは合っていなかったのに放っておいたそうだ、まぁ、発注時に間違えて、メールや電話連絡で訂正される事もあるだろうし……と」

まぁ、たまにあるよね。
実際に以前、本社の総務でそんなことがあって、大わらわしていた。

だけど、課長は渋い顔で首を振る。

「ここの所長は、そういったミスが15件を越えてから調べはじめて、訂正の形跡が無いことに気づいて、今更青くなって連絡して来やがった」

最後は舌打ちつきで、目を細めた。

……それは大変だ。
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