カタブツ上司に迫られまして。
***
物品管理室Aの隣にある小会議室を借りきって、課長と二人で黙々とファイルの数値を調べる。
さっきまではここの所長や、システム系の担当者が出たり入ったりしていたけれど、今は二人きりだ。
たまに課長がブツブツ呟いているのを聞きながら、スーツのジャケットを脱いで、髪もお団子にまとめる。
クーラーは効いているはずなのに、なんだか暑い。
「ここの管理は、本当にずさんだな……」
一冊のファイルに、仕入れ伝票の写しと、支社や営業所に送付した物流リストの原本が混在している。それを言っているんだろうな。
溜め息をつきながら電卓を叩いた。
「……ここの監査役担当は誰でしたか?」
「部長だ。一人ってことはないが、その都度、連れてくる面子は違っていたはずだ」
「部長……左遷されませんかね」
「いやぁ。多少給料下がるかもしれんが、飛ぶとしたらここの営業所の所長だろ」
……そうだよね。実際には部長のミスでもないし、監査役としての配慮の足りなさを言われる程度かも。
「こっちの体制も指摘されるだろうな。ここまでずさんなら部長の手にも余るだろ。ここの体制を立て直すのも考えないとならないが……監査室の体制もだ」
ファイルを捲りながら、課長は次にするべき事を模索し始めている。
それをぼんやり眺めていたら、鋭い視線と目が合った。
「鳴海。飯に行って、少し休んで来るか?」
「時間がもったいないですよ。集中します、集中……」
「いや……休憩にしよう」
課長はファイルを閉じて、それから大きく身体を伸ばした。
「腹が減って集中なんて出来るはずもないからな。上野の所に行くぞ」
立ち上がった課長を見上げて首を傾げる。
「上野君?」
「どうせあいつも飯忘れてシステム調べてるだろ。そんな奴だから連れてきたんだが」
ああ……そういう感じなんだな。
「では、呼んできます。どこにいるんでしょうか?」
ファイルを閉じて立ち上がると、課長は真面目な顔で頷いた。
「別棟のシステムサーバーがある場所……お前、解るか?」
今の説明で解るはずがないよ。
だいたい、この建物内に入るのは初めてなんだから。
「冗談だ。少し入り組んでいる場所にあるから、迷子になるぞ」
そう言いながら課長はドアに向かい、ドアを開けると突然聞こえた声にぎょっとした。
「お昼ですよお昼~。って言っても、もう14時なんだけど、どーせ忘れてるだろうから呼びに来たよ」
あっかるい声と一緒に顔をだしたのは、ここに着いた時に課長と話をしていた水色の繋ぎを着た男の人だった。
物品管理室Aの隣にある小会議室を借りきって、課長と二人で黙々とファイルの数値を調べる。
さっきまではここの所長や、システム系の担当者が出たり入ったりしていたけれど、今は二人きりだ。
たまに課長がブツブツ呟いているのを聞きながら、スーツのジャケットを脱いで、髪もお団子にまとめる。
クーラーは効いているはずなのに、なんだか暑い。
「ここの管理は、本当にずさんだな……」
一冊のファイルに、仕入れ伝票の写しと、支社や営業所に送付した物流リストの原本が混在している。それを言っているんだろうな。
溜め息をつきながら電卓を叩いた。
「……ここの監査役担当は誰でしたか?」
「部長だ。一人ってことはないが、その都度、連れてくる面子は違っていたはずだ」
「部長……左遷されませんかね」
「いやぁ。多少給料下がるかもしれんが、飛ぶとしたらここの営業所の所長だろ」
……そうだよね。実際には部長のミスでもないし、監査役としての配慮の足りなさを言われる程度かも。
「こっちの体制も指摘されるだろうな。ここまでずさんなら部長の手にも余るだろ。ここの体制を立て直すのも考えないとならないが……監査室の体制もだ」
ファイルを捲りながら、課長は次にするべき事を模索し始めている。
それをぼんやり眺めていたら、鋭い視線と目が合った。
「鳴海。飯に行って、少し休んで来るか?」
「時間がもったいないですよ。集中します、集中……」
「いや……休憩にしよう」
課長はファイルを閉じて、それから大きく身体を伸ばした。
「腹が減って集中なんて出来るはずもないからな。上野の所に行くぞ」
立ち上がった課長を見上げて首を傾げる。
「上野君?」
「どうせあいつも飯忘れてシステム調べてるだろ。そんな奴だから連れてきたんだが」
ああ……そういう感じなんだな。
「では、呼んできます。どこにいるんでしょうか?」
ファイルを閉じて立ち上がると、課長は真面目な顔で頷いた。
「別棟のシステムサーバーがある場所……お前、解るか?」
今の説明で解るはずがないよ。
だいたい、この建物内に入るのは初めてなんだから。
「冗談だ。少し入り組んでいる場所にあるから、迷子になるぞ」
そう言いながら課長はドアに向かい、ドアを開けると突然聞こえた声にぎょっとした。
「お昼ですよお昼~。って言っても、もう14時なんだけど、どーせ忘れてるだろうから呼びに来たよ」
あっかるい声と一緒に顔をだしたのは、ここに着いた時に課長と話をしていた水色の繋ぎを着た男の人だった。