カタブツ上司に迫られまして。
「一緒に食べにいこう。ついでに彼女を紹介してよ」
目が合って、にっこりと微笑まれる。
「俺は同じ企画管理部。IT情報管理課の原本悟史。プログラムやシステムメンテナンスが主だけど。君は?」
「部下の鳴海だ。上野はどうした?」
課長が彼の頭をガッシリつかんで、原本さんが部屋に入ってくるのを阻む。
なんて言うか、原本さんは仔犬のようだ。
ウェーブのかかった髪に、人好きのするような笑顔。顔の造作もどちらかと言うとアイドルグループの男の子を思い出す。
「上野君は先に玄関に行ってもらってるよ。なになにー。俺と彼女の仲を引き裂くつもりかー?」
「どんな仲だよ。言ってみろ」
……相当、軽い性格の持ち主みたいね。
課長は不機嫌そうな顔をして、原本さんは半笑いで、ある意味では睨み合っている。
でもすぐに原本さんがキョトンとして、それから爆笑が始まった。
「笹井にしてはめっずらしー。ますます彼女に興味わいたなー」
「わかせるな。とりあえず、鳴海、行くぞ」
課長は怒ったように言って、原本さんの頭を掴んだまま会議室を出ていくから慌ててついていく。
「鍵、締めといてくれ」
投げられた鍵をキャッチして、会議室のドアに鍵をかけると振り返る。
振り返った瞬間、ポカンとした原本さんが課長を見上げた。
「……もしかして、付き合ってる?」
「ないです」
私がキッパリはっきり言い切って、鍵を課長に返すと、課長は片方の眉を上げた。
「飯を食うぞ。本当に空きっ腹はろくなことを考えない」
それは異論無いけれど、上野君を見つけて離れていった原本さんを眺め、それからまた課長を見上げた。
「仕事中に、真面目が崩れた課長を初めて見ました」
「俺は珍獣じゃないぞ。……仕方がないだろう。あいつは同期入社で、前の課では同僚でもあったんだ。まぁ、よく飲みにも行っていたしな」
「そうなんですね。でも、いつもの真面目な課長より、フランクな課長の方が好きなので、私は嬉しいですが」
課長が目を丸くして、それから腕を組み、難しい顔をする。
「それは俺も嬉しいが、普段通りの俺なら、監査室の課長には見えないだろう」
……それは解っているんだ。
目が合って、にっこりと微笑まれる。
「俺は同じ企画管理部。IT情報管理課の原本悟史。プログラムやシステムメンテナンスが主だけど。君は?」
「部下の鳴海だ。上野はどうした?」
課長が彼の頭をガッシリつかんで、原本さんが部屋に入ってくるのを阻む。
なんて言うか、原本さんは仔犬のようだ。
ウェーブのかかった髪に、人好きのするような笑顔。顔の造作もどちらかと言うとアイドルグループの男の子を思い出す。
「上野君は先に玄関に行ってもらってるよ。なになにー。俺と彼女の仲を引き裂くつもりかー?」
「どんな仲だよ。言ってみろ」
……相当、軽い性格の持ち主みたいね。
課長は不機嫌そうな顔をして、原本さんは半笑いで、ある意味では睨み合っている。
でもすぐに原本さんがキョトンとして、それから爆笑が始まった。
「笹井にしてはめっずらしー。ますます彼女に興味わいたなー」
「わかせるな。とりあえず、鳴海、行くぞ」
課長は怒ったように言って、原本さんの頭を掴んだまま会議室を出ていくから慌ててついていく。
「鍵、締めといてくれ」
投げられた鍵をキャッチして、会議室のドアに鍵をかけると振り返る。
振り返った瞬間、ポカンとした原本さんが課長を見上げた。
「……もしかして、付き合ってる?」
「ないです」
私がキッパリはっきり言い切って、鍵を課長に返すと、課長は片方の眉を上げた。
「飯を食うぞ。本当に空きっ腹はろくなことを考えない」
それは異論無いけれど、上野君を見つけて離れていった原本さんを眺め、それからまた課長を見上げた。
「仕事中に、真面目が崩れた課長を初めて見ました」
「俺は珍獣じゃないぞ。……仕方がないだろう。あいつは同期入社で、前の課では同僚でもあったんだ。まぁ、よく飲みにも行っていたしな」
「そうなんですね。でも、いつもの真面目な課長より、フランクな課長の方が好きなので、私は嬉しいですが」
課長が目を丸くして、それから腕を組み、難しい顔をする。
「それは俺も嬉しいが、普段通りの俺なら、監査室の課長には見えないだろう」
……それは解っているんだ。