カタブツ上司に迫られまして。
そんな感じで四人で昼食を食べに行き、戻るとファイル監査に戻った。

「そう言えば、半年前にここのシステムが変わったと原本さんがおっしゃっていましたね。課長。私の方でも少し気になっている事が……」

ポツリと呟くと課長が顔を上げ、それから目を細めて頷いた。

「ATプログラムから、会社自体変わっている。そもそも、取引会社だったから……」

言いかけて、課長は調べ終わったはずのファイルから、一冊のファイルを取り出す。

「鳴海。数値がズレが出た商品の出荷した担当者と、発注をかけた相手方の担当者を調べられるか?」

「出荷をしたうちの担当はバラバラですが、発注をした仕入れ先は同一。その担当は一貫して西宮雄一という方です」

おかしいな、と、思ったんだよね。

商品は違うけれど……それこそ、全く違うんだけれど、発注者が全てこの人で。

確かに小さい会社の発注担当がその人だけって可能性はあるけれど、冷凍食品から、工業器機まで一人で発注をかけるとは思えない。

ファイルを見ていた課長が、ちらっと私を見てから眉間にシワを寄せる。

「発注をした会社は株式会社ルファーブルか?」

「……お察しの通りです」

「西宮はうちの物流システムをプログラミングした技術者だ。技術者が発注を担当するのはおかしいなぁ?」

「おかしいでしょうね」

「問題は、どこでその数値が変わったか……だが」

しばらくルファーブル関連からの発注を中心に調べ進め、西宮さん以外の発注に問題は無いことを確認する。

「西宮……が、単独で事を起こしたとも思えないが。内容的には、数百万単位の差額が発生するぞ」

「会社自体に問題があるのでしたら、取引自体も考えないといけませんが……」

「思わぬところで思わぬ事態だな」

溜め息をついて外を見ると、すでに外は闇に包まれつつあった。

「とりあえず、プログラミングの方でどうなっているか……」

「はい……」

ガチャリとドアが開いて、上野君が顔を出した。

「課長。プログラムで少し問題が……」

課長が厳しい顔で上野君を見ると、上野君は少し戸惑ったような顔をする。

「僕に怒っても仕方がないですよ。課長以上に原本さんが凄い剣幕ですけれど」

いつもの愛嬌を振り撒いて、上野君と課長が専門用語混じりの会話を始めた。
< 44 / 80 >

この作品をシェア

pagetop