カタブツ上司に迫られまして。
***

それから数日、課長達は通常業務をこなしながら会議に参加している。

問題が重要拠点なだけに、システムを右から左に替えるって訳にもいかないし……やっぱり大変だよねぇ。

まず課長は定時であがることはなくって、早くても21時と言う感じ。

だいたい課長が定時にあがることの方が珍しいけれど……。

仕事帰りにお母さんのところに寄って、毎日の出来事について会話して、毎日課長の晩御飯を作って待っている。

今日の夕御飯には、冷しゃぶサラダ。
土用の丑の日には鰻でも奮発してあげようかな。

何だかだいぶ、課長との生活にも慣れてきた。

仕事中の課長は相変わらずで、自宅での課長も相変わらず。

そのギャップにも慣れてきて、たまに自宅で難しい顔をしているのも見つけるけれど、その顔にも慣れてきている自分がいたりする。

毒されて来たと言うべきか……。

でも、こんな生活も悪くないな、なんて思い始めた自分もどうなんだろう?

とりあえず、先にご飯を食べて、課長の分の夕飯をラップに包んで冷蔵庫に入れていたら、屋根に当たる雨音に気がついて天井を見た。

「窓閉めないと……」

土砂降りの雨を見ながら、開けてあった窓やサッシを閉めていくと、ピカッと窓の外が光った。

それからゴロゴロと聞こえる低い音。

「……やだ」

これは間違いない! 雷だ!

小さな頃から、苦手なものトップをひた走る雷。

昔から、地震・雷・火事・親父とは聞くけれど、うちの父さんは怖くないし。地震はあまり身近ではなかったし。火事はこの間経験したし。

一番雷が苦手なのにー!

絶対に嫌。 嫌だけど、どうしよう。

とりあえずスマホにイヤホンさして大音量で動画でも……布団を被れば怖くないかも!

そうしよう。そうしようとして、玄関からガラガラと戸口の開く音が聞こえて、ほっとした。
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