カタブツ上司に迫られまして。
「どーして課長はロマンチストの癖に言葉は無骨なんですかっ!」

「俺はロマンチストじゃねえよ。しかもお前に言われたくない気がする」

「なんでですか」

「天の邪鬼だし」

ポツリと言われてムッとした。

「どーせ可愛くない女です! 可愛くない女をからかって遊ばないでください!」

「からかってるだろうが、遊んではいないだろ。だいたいお前は可愛いフリは似合わねえって俺は言っただろ」

「天の邪鬼って可愛くないって言っているのと一緒ですから!」

「いや。いいんだよ、それで」

「いいって……っ!」

ん? 良いのか?

どうして良いんだろ?

「男の人って、素直で可愛い女の子が好きじゃないですか」

真面目な顔で課長を見上げると、やっぱり真面目な顔で課長は私を見下ろす。

「そんなことを真面目に聞いてくる段階で、お前は素直だよ」

「……えー?」

そうなのかなぁ? そうなんだろうか?

「だいたい、お前は前の男どもと俺を比べてるだろ」

微かに目を細める課長から、視線を逸らせる。

……男ども、と、言われる程、たくさんの人と付き合った事は無いんだけどさ。

比べているつもりは無くても、考えてしまうのはしょうがないと言うか。

「10代20代の若造と一緒にすんなよ。鳴海」

冷たく言われて、上目使いに課長を見る。

「おっさんでも無いじゃないですか」

「お前はやっぱりSだな」

そう言いながら、課長は部屋に入っていった。

目の前でパシンとしまった襖に、唇をとがらせる。
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