カタブツ上司に迫られまして。
「唐突ですが……男の人って、可愛い女が好きですよねー?」

「それぞれじゃない? 俺は甘えたいから、しっかりした人が好きだなー」

「でも、見た目も性格も可愛い人を選ぶ人って多いじゃないですか」

睨むようにして言うと、原本さんは目を丸くした。

「鳴海ちゃん、笹井に可愛くないって言われたの?」

そこまでズバリと言うはずがないじゃないか。

でも、天の邪鬼とは言われたよね。

天の邪鬼って、確か妖怪だよね。

妖怪って言われる私って、なんなんだろう。

「原本さん。課長って夏川さんと付き合ってたって本当ですか?」

「え。あ……うん。いや、ううん」

「どっちですか」

困った表情を眺めながら、またビールを飲む。

「まぁ、付き合ってたって言っても、5・6年くらい前じゃない? って、鳴海ちゃん、夏川知ってるの?」

「私は、もともと経理入社なんです。知らないはずがないでしょう」

「あー……じゃあ、夏川が結婚しているのも知ってるでしょ? 鳴海ちゃんだって、過去に誰かと付き合ったこともあるでしょうが」

そりゃ、あるんだけど……。

「だって、夏川さん可愛いじゃないですかー。私って可愛いタイプじゃないですもん」

「えー……どうしよう。鳴海ちゃんは絡み酒なんだ」

「違いますよ。お姉さんおかわり!」

「おかわりは烏龍茶で!」

いきなり割り込んできた声と同時に手首を捕まれて、目を丸くして視線を上げる。
そこに、かなり不機嫌そうな課長の顔が見えた。

「は、早いですね。課長」

「走った」

冷たい視線で言われて、くいっと顎で指示されて大人しく席を奥にずれる。

どかっと隣に座った課長が、ネクタイをシュルッと外した。
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