カタブツ上司に迫られまして。
それでも課長は原本さんと話をしながらビールを飲んでいる、それを眺めながらふわふわした気持ちでタコわさびを食べる。

もやもやするんだよねー。

そういう時って、誰かに吐き出せばいいんだろうけどさ。

だからって……。

そんなに素直に言える女なら、可愛くないなんて言われないんだから!

「こら鳴海……っ!」

無言で課長のジョッキを掴むと、ぐびぐび飲み干す。

「お前……なぁ」

かなり呆れた顔をされたけど、かまうもんか。

素面では、やってられない。

「祐さん」

「なんだよ。いきなり」

「私は可愛い女じゃないです」

「知ってるよ」

とことん呆れた顔をされたけど、負けないんだから!

ビシッと課長を指差し、それから思いきり息を吸う。

「可愛いフリもしない女が良いなんて、あなたはMですか?」

「どっからそんな発想が出てくるんだお前!」

課長は怒鳴って、原本さんはお腹を抱えて笑いだした。

「笹井がMとは知らなかった」

「原本うるさい。鳴海もいいから、もう寝ちまえ! 酔いが覚めたら相手してやる」

「眠たくなんてないもん!」

ばっちり目は覚めてるもん!

課長を睨んだら目を細められ、いきなり肩に手を回されて……。

片手で引き寄せられて、課長の腕の中にいた。

「いいから。寝ろ」

頭を抱えられたまま、耳元に囁かれる。

心臓はバクバクするし、店員さんの大きな声でのやり取りは聞こえるし、原本さんの笑い声も聞こえるし、寝ろと言われて、すぐに眠れるはずなんてないじゃないか。

そんなはずはないんだけど。

暖かいな。

心地よくて、ふわふわして……。

目を瞑ると、小さな笑い声が聞こえた。











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