瞬きの星
その時僕は何処に居た。
体重をのせた自転車は、惰性のままよろよろと進み。僕はそれが当たり前の事であるように、バランスをとりながら、すぐ先の電柱の下まで転がした。

「またか。」

それは普段の事であった。
けれどそれが面倒であると、今ではとても思えないのだ。
普段の中で、日常の中で、外れる時がある。
しゃがみこむと長いチェーンがだらりと垂れている。それは静かに揺れている。
その間に、休む事が出来るから。思い出す事ができるから。
この夏の隙間のような季節も、今ではとても自然なものに、美しいものに思える。
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