瞬きの星
心から真っ直ぐに涙があふれていた。
隣にたたずむ彼女の目は、ただじっと先を見つめ続けて動かない。
「あぁ、そうか。彼女はもう泣けないから、俺が、」
そして思い出す。
「ここが。」
ゆっくりと頭を彼女から前へ動かしていく。

息が止まった。
僕達の時間の総てを費やして、奪われて、その花木だけが時間を有しているかのように。
目の前には、建ち並ぶ桜の木々が月の輝きを放っていた。
花々はこれ以上ないほどに、その総てが凛と咲き誇っている。
その一枚一枚を、静かに雨が撫で打って。散ってゆく月の欠片が、幾層にも連なり、真直ぐに伸びた道を埋めつくしていた。
それは眩しい雪景色のように。
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