瞬きの星
「あの、」
そこまで言って母親の手の中にあるものが目に留まった。
そうだったんだ。僕が近づいていきそれを手に取ろうとすると、その人は驚いたように我に返りそれを阻止しようと、もう片方をつかむ。
「何するの、やめて!」
「捨てます。」
「や、やめて下さい。」
オレンジ色の表紙が二つに破れた。幼稚園の卒園記念の文集。その一ページ一ページが、はらはらと床に広がっていく。
「あ、あぁ、、サユリ。」
奮える肩をしたお母さんは僕を睨み付ける事も忘れて、その一枚一枚を抱き上げる。
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