優しい彼が残したもの
繰り返す日々
「綾音ちゃん、いつもありがとう。
でも、もうそんな顔しないで…あなたのせいじゃないのよ。」
「…」
和室で俯いたまま背を向ける私に声をかけたのは、
彼、瀬川 康喜 (せがわ こうき)のお母さん。
あの事が起きてから、私は定期的に康喜の家にお邪魔する。
その度に、康喜のお母さんは同じ言葉をかけてくるようになった。
でも、私はこうして康喜の家に来ることは義務であると思っている。
ううん…
本当は、こうでもしないと全てが壊れてしまいそうで怖かったからだ。