天空戦記
5

数ヶ月後、神蘭は荷物を片手に母と話していた。


「本当に行くの?」

「・・・うん」

「お父さんは、最後まで望んでいなかった。寧ろ、軍に入らないことを願っていたのよ」


その言葉に神蘭は僅かに目を伏せる。


「・・・それでも、やっぱり許せないの。月夜のこと」


今でも父を失った夜のことは思い出せる。

今は月夜に対しては憎しみしかない。


「それに」


そして次に、父が封魔に自分のことを頼んでいたことを思い出した。


「父様は私のことを上司の闘神に頼んでいたけど、私は私のことを任せるつもりはないわ」

「神蘭・・・」

「だって、あの人達がもっと早く来ていたら、きっと父様も助かってた。どうして遅かったのか理由はわからないけど、父様を助けられなかった人を信用出来ない」


母が悲しげな表情をする。それでも止められなかった。


「私は、必ず強くなる。今よりもっと、もっと。・・・そして、いつか必ず・・・この手で月夜を討つ。私自身の身だって、守り抜いてみせる!」


(だから、見ていて、父様!)


そう言い切ると、神蘭は母に背を向け、振り向くことなく歩き始めた。
< 10 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop