天空戦記



「ちっ、逃がしたか」


剣を納めた少年が神蘭達の方へ近付いてくる。

それを神蘭は茫然と見ていたが、聞こえてきた呻き声に我に返った。


「しっかりしなさい!」

「父様!」


声を掛けている女性の隣から呼び掛けると、父はうっすらと目を開く。


「神・・・蘭、よかった・・・、無事だったか・・・」

「父様・・・」


そして安心したように笑うと、父は少年と女性を見た。


「怜羅様、封魔様も、来てくださり、ありがとうございました」

「・・・いや、俺達は間に合わなかった。あいつらも逃がしてしまったし、すまなかったな」

「いえ、お二人が来なかったら、神蘭も無事ではすまなかったでしょう。・・・神蘭」


呼ばれて、父の顔を覗きこむ。


「母さんを頼むぞ。・・・・・・封魔様、もし一部下の願いを聞いていただけるなら、お願いがございます」

「・・・何だ?」

「どうか、神蘭を守って下さい。月夜から、その後ろにいる者達からも」

「・・・わかった」

「封魔!勝手に・・・」

「長い間、半分近くも年下の俺によく仕えてくれた部下への礼と、命を救えなかったことへの償いだ。・・・文句は言わせない!」


言い切った封魔に、怜羅は溜め息をついた。
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