双子兄貴の恋愛事情。(仮)
突然、背後からの声。
「わっ?!…と…モガミさん…」
振り向けばそこにいたのは、クラスメイトの最上花織(モガミカオリ)だった。
「カオリって呼んでよー?…私もニジミって呼びたいし!」
なんかグイグイくるなぁ…この女…。
私から見たカオリは、つやつやのグロスまみれの唇を強調しているケバい女子…。
普段あまり化粧をしない私にとって、それは好印象ではない…。
「カオリ……」
「そうそー。なんか、ニジミっていつも一人でいるよね。気になってたんだー」
「え?…」
…だから何…?
思わず…心の声が出そうになる…。
「あっ、今お兄さん呼んでたよ?なんかすごく怒ってたけど…」
「あー…いいのっ。ほっといて」
「それでウチのクラス覗いて、ハリマくんに…」
「えっ?!ハリマ?!」
『ハリマ』という名前を聞いて、私の足は勝手に走り出す…。
トイレから出て二番目の教室…。
私のクラス、1年D組。
半分開いた扉を思い切り開けたため、ドォンッという音とともに扉が少し跳ね返った…。
「ハリマ!?大丈夫?!」
「ん?…あっ!いた!」
目線の先…男子生徒の塊の中、私を見て笑顔を見せる奴…。
播磨刹那(ハリマセツナ)。
この高校で、今のところ唯一『友達』と思える人間だ。