俺のそばから離れるな‼︎
「あいつに何かされたら俺にすぐ言えよ?」
奏は呆然と立ち尽くす私の手を取ると、心配そうに顔を覗き込んで来る。
「う、うん。大丈夫だよ」
今のところは。
それより……。
「逆らえない運命ってなに?やっぱり漆原さんとの間に何かあるの?」
そっちの方が気になるよ。
何かあるなら教えて欲しい。
奏は私の言葉に黙り込んだ。
髪をクシャッと掻き回しながら、困ったような表情を浮かべている。
「実は……親が勝手に決めた婚約者なんだよ」
「え?こ、婚約者……!?」
頭に衝撃が走る。
今時、そんなことが本当にあるんだ。
「けど……俺はさくらにしか興味ねーし、結婚すんのもさくらだって決めてる。何も心配しなくていいから」
頭をポンッと撫でられて、不覚にもドキッとしてしまった。
自信に溢れた奏を見ていると、何も心配することなんてないんだって思える。
それにしても……。
「け、結婚って……相変わらず話が飛躍しすぎだから!」
嬉しかったくせに、そんな可愛くないことしか言えなかった。