俺のそばから離れるな‼︎
「ううん、何でもないよ」
私は笑顔を浮かべてその場を取り繕った。
「何かあった?あ、奏とのことで相談があるなら俺に言ってね?」
未だに机に突っ伏したままの奏に目をやりながら、ケイが優しく微笑んだ。
優しいんだよねー、ケイって。
唯一の女友達である愛佳ちゃんは同じ教室にいないし、このクラスに心を開いて話せる人はほとんどいない。
だから、ケイのその言葉がすごく嬉しかった。
「ありがとう。でも大丈夫だよ」
うん。
きっと大丈夫。
ケイに言うわけにはいかないもんね。
結局、この日漆原さんが教室に来ることはなかった。
ビクビクしていたけど、先生から呼び出しがかかることもなくて。
宣言通り、本当に言わないでくれたんだろうか?
教室に来なくなってしまった漆原さんを疑問に感じつつも、スッキリしない日々を過ごした。