俺のそばから離れるな‼︎
決意
「奏……私、今日の夜には実家に帰るけど」
夕方になり、隣の部屋に閉じこもっていた奏に向かってドア越しに声をかける。
ーーガチャ
しばらくするとドアが開いて、中から奏が姿を見せた。
その顔はどんより暗くて、これまでの奏とはまるで別人のよう。
明らかに元気がないのがわかった。
「だ、大丈夫……?」
「ん?ああ、さくらは何も心配すんな」
口元を緩めて微笑む奏の顔は、すごく悲しげで見ていられない。
「いつもそう言うけど、心配だよ」
「大丈夫だから。な?」
奏はきっと苦しんでいる。
それがわかるのに、ムリをさせてしまう自分が情けなかった。
もっと私を頼ってくれていいんだよ?
「奏はいつもそうだね。私には何も言ってくれない。家のことだって……今日知ったんだよ?」
だからって、私の気持ちが変わることはないけど。
それでも、隠さずに言って欲しかった。
「悪かったよ。家のこと言って、どう思われるのかって考えたら言い出せなかったんだ」
力なく笑う奏に、激しく胸が締め付けられる。
そんな顔をさせたいわけじゃない。
いつもみたいに、強気に笑って欲しいのに。