俺のそばから離れるな‼︎
「はい、100円ね」
パックのジュースを冷蔵庫から取り出したおばちゃんは、業務的な笑みを浮かべて淡々と言う。
私はポケットから小銭を取り出し、おばちゃんに渡そうとした。
「俺が払うから」
「遠慮しとく。体でお礼しろって言われても嫌だし」
「言わねーよ」
「どうだかね」
私はおばちゃんにサッと100円を渡し、すぐに図書室へ向かった。
桐生奏が何か言ってたような気がするけど、スルー。
本当に体でお礼しろって言われたら嫌だもん。
奴なら絶対に言うと思う。
さてと。
カバンから教科書を取り出し机に広げる。
今日の授業分を取り戻さないと!
勉強が好きなわけじゃないけど、教室ではまともな授業を受けられないから自分で頑張るしかない。
頑張ったって……誰かが認めてくれるわけじゃないのにね。
「勝手に行くなよ」
「へっ……!?」
わ、ビックリした……!
気配なく隣に立たないでよー!
「なんでそんなに勉強が好きなんだよ?適当にしてりゃいいじゃん」
「か、関係ないでしょ。あなたには」
「“あなた”じゃなくて“奏”って呼べよ」
「やだ」
「やだって……」
ガクッと肩を落とした桐生奏は、私の向かい側のイスを引いてドカッと座った。