俺のそばから離れるな‼︎
チャラくて俺様で強引で、私の都合なんて一切考えない自己中男のくせに。
なによ。
なんなのよ。
こんな時だけまともなことを言っちゃってさ。
ギリッと唇を噛み締める。
奴の言う通りだ。
いい学校に行かなくたって、お医者さんになれるのは事実。
医大に入りさえすればいいんだもん。
わかってる。
問題なのは私の心だって。
A判定だった高校の受験に失敗して、思い描いていた未来があっさり壊れて。
信じていた自分に裏切られたショックが大きすぎて、やる気がなくなった。
挫折したまま、一歩も動けないでいる状態なんだ。
「大切な夢なんだろ?簡単に諦めんなよ」
頬杖を付いたまましれっとそう言い、桐生奏はスマホを触り始めた。