俺のそばから離れるな‼︎
わからないよ
その日の夜。
部屋でテレビを観ながら笑っている奏をスルーして、のんびりお風呂に浸かっていた。
奴が転がり込んで来た今、お風呂だけが唯一落ち着ける空間だ。
って……どんどん居場所がなくなっていってるよ。
そのうち、お風呂にまで一緒に入ろうとか言われたらどうしよう。
「おい」
そんなことを考えていると、すりガラスの向こうから突然低いハスキーボイスが聞こえた。
なななな、なに……!?
まさか、お風呂にまで!?
「ムリムリーッ!!」
ドアを開けられたわけでもないのに、顎先をお湯に沈めて身構える。
もしドアが開けられでもしたら、思いっきりお湯をぶっかけてやるんだから!
「何焦ってんだよ?」
「か、関係ないでしょ……!出てってよ、変態!」
「おせーし、倒れてんじゃねーかと思って。そんだけ元気がありゃ大丈夫だな。安心しろよ、覗こうなんて思ってねーから」
えっ?
そうなの?
ーーバタン
脱衣所のドアが閉まる音がして、奴の気配がパタリと消えた。