俺のそばから離れるな‼︎
あーもう!
静まれ、心臓!!
ありえない。
奏なんかにドキドキするなんて。
ありえない!!!
「なぁ。俺のこと……ちょっとは好きになった?」
「な、なるわけないでしょ……っ!」
「はぁ、そっか。道のりはなげーな」
うっ。
耳元で囁くのはやめて欲しい。
シャンプーの爽やかな香りが漂って来て、クラッとめまいがしそうになった。
お腹に回された手が温かくて、やけに心地良い。
「奏は……なんで森ノ里に来たの?」
「んー、俺ー?」
さっきまで色気のある声を出していたかと思えば、今度は間延びしたような何ともやる気のなさそうな声。
なんなのよ、その差は!
「女にモテすぎてウザかったのと、都会に疲れたから田舎に現実逃避しに来た的な」
「ふーん……あっそ」
聞くんじゃなかった。
ただの自慢じゃん!
都会に疲れたから現実逃避って、どっかの若年寄りか!!