深愛なる君へ、この愛を捧げます。
『理人はいつ目が覚めるか分からない。
それどころか、あいつの母親としてこんなことはないと信じたいけど、目が覚めないまま死ぬ可能性だってある。
そんな息子のことを待ち続けるくらいなら、日海とアンタのことを受け入れてくれる男のところに嫁いだ方がアンタも日海も幸せなんじゃないかい?
理人を待ち続けてもし理人が帰らぬ人になったら、アンタも悲しいだろうけど、一番悲しいのは父親のいなくなった日海なんだよ』
「お義母さんに言われたの。
ずっと目が覚めない理人のところにいて待ち続けるくらいなら、私と日海を受け入れてくれる男性のところに嫁いだ方がいいって。
その方が私も日海も幸せだろうって」
お義母さんの言うとおりだった。
理人は、いつ目が覚めるのか分からない。
況してや目が覚める保証なんて、どこにもない。
理人の呼吸はいつ止まってもおかしくない。
医者にこの言葉を何度も言われてきた。
確かにこのまま理人を待ち続けて、もし理人が死んだら?
年をとっておばさんになった私をもらってくれる男性(ひと)なんてそう現れないだろうし。
何よりずっと会えることを楽しみに待っていた日海を悲しみ以上、実の父親に一度も見つめてもらえない失望感を味わうことになってしまうだろう。
そうなることくらいだったら、血は繋がってなくても日海のことを娘として見つめて愛してくれる男性(ひと)を見つけるべきなのかもしれない。
「お義母さんに言われて私、少し考えたんだよね。
でもすぐに答えは出た。
ねぇ、理人。
理人が言ったこと、覚えてる?」