深愛なる君へ、この愛を捧げます。
ーあれはまだ日海が産まれてなくて、私のお腹の中にいた頃ー
お腹が大きくなってきて動くのが一苦労だった私は、休み休み家のことをしていた。
ソファーに座って大きくなったお腹をさすっていると、まだお腹の中の日海がお腹を蹴ったのが分かった。
「…あ、」
それについ声を出すと、家の長い廊下からドタドタと走ってくる足音が近づいてきた。
「どうした!?産まれるのか!?」
「…ぷっ、何それ持ってきてるの」
トイレ掃除をしてくれていた理人がゴム手袋をしてブラシを持ったまま、慌てた表情でやって来た。
それがつい可笑しくて、笑ってしまう。
「まだ産まれないから、ブラシとゴム手袋置いてきて」
私が言えば理人はホッと一息ついて、トイレにゴム手袋とブラシを置いて、私の隣に座った。
そして私は理人の手をとって、自分のお腹にあてる。
理人は何が何だか分からないといった顔をしていたけど、ふと感じた感触に目を見開いた。
理人は嬉しそうに微笑んで私を見つめる。
欲しいものを買ってもらった子供のようなキラキラした目に、つい笑ってしまう。
「ね?動いたでしょ?」
私が言えば理人は微笑んだまま、私のお腹に耳をあてる。
それだけかと思ったら。