深愛なる君へ、この愛を捧げます。
そして私は大学生になり、友達の代わりに地元の小さな遊園地のアルバイトをしていた。
『楽しいから!』の言葉に騙され、私は何故かウサギの着ぐるみを着て寄ってくる子供達に風船を配っていた。
喋らず笑顔でいなくていいのが幸いだけど、真夏でしかも着ぐるみの中が暑く、友達に絶対何か奢らせると決めていた時。
『あいつらどこ行ったんだよー…』
遊園地内は誰の声かなんて聞き分けられないくらいうるさいのに、その声だけはハッキリと聞こえた。
木製のベンチに腰掛けていたのは、会うのが中学以来の理人だった。
身長もグッと伸びて、大学生になったからか髪も黒から茶髪に。
あの時の理人とは違う、大人になった理人がいた。
最初は放っておこうと思ったけど、一応バイトしてるし『お客様は神様だ!』とオーナーがしつこく言っていたから、仕方なく控え室から差し入れでもらった冷えたミネラルウォーターとハンカチを持っていった。
「………」
何も言わずに、ベンチに座ってる理人に近づき、冷えたペットボトルを理人の頬にあてた。
もちろん私はウサギの着ぐるみを着ている。
『わっ!ビックリした…ってウサギ!?』
理人の反応を無視して、無理やりペットボトルを握らせた。
そして汗をかいてる理人の額に持ってきたハンカチを、思いっきりくっつけるようにあてた。
「…これ返さなくていいから、家帰ったら捨てて。
ハンカチくらいまた買えばいいし」
黙ってその場を去ればいいものを、何を思ったのか余計なことを口走ってしまった。
しかもこれはデジャヴというやつでは?
理人が驚いて固まっている間に私は新しい風船を取りに全力で走った。