深愛なる君へ、この愛を捧げます。
「わー、ここの海久しぶりだねー」
「そ、そうだね…」
靴を脱いで理人に話しかけながら、足を海に入れる。
冷たい海水が心地よかった。
いつもなら海にテンションが上がる理人の返事が微妙なのに、違和感を覚える。
振り返ると、理人は浮かない顔をして俯いている。
「理人、どうしたの?具合でも悪い?」
「いや…」
具合悪くはないと否定する理人だけど、その表情はまだ浮かない。
気になった私は、砂浜を歩いて理人に近付いた。
「ほんとに?いつもなら海に来た途端に走り出すのに、今日はなんか変…っ!」
俯いている理人の顔を覗き込むと、言葉の途中で手をガシッと握られた。
ビクッと体が反応し、固まる。
理人は顔を上げると、真っ直ぐに真剣な目で私を見つめてきた。
「俺さ、どうしても叶えたい願いがあるんだ」
「…それは何って聞いてもいいの?」
私は小首を傾げ微笑むと、真剣な目をしていた理人も釣られるように笑った。
そして両手を包み込むようにして手を握られ、それを胸元の高さまで持ち上げられた。
「…俺と家族になってほしい」