深愛なる君へ、この愛を捧げます。
5話『一緒に笑おう』
運命なんて、奇跡なんて、神様なんて信じたことなかった。
でもこの出来事が本当なら、少しは信じてもいいかもしれない。
また病棟内を全速力で走っているけど、頭の中はこんなことを考えるくらい冷静で。
寝ている日海をお母さんに任せて、すぐに病院にやって来た。
「…ハァ…ッ、ハァ…」
前走ったみたいには息が続かなくて、到着した病室前で息を整える。
「理人さん!私のこと分かりますか?
ここはどこだか分かりますか?」
病室からは看護師さんの声や泣き声が聞こえる。
私はうるさい胸の鼓動を抑えるように胸元の服を掴み、病室の戸を開けた。
病室の戸を開けるとすぐ目に入ったのは、理人がいるベッドの横で泣き崩れているお義父さんとお義母さん。
めったに泣かないお義母さんが、泣いている。
「…体温、脈、血圧、サチュレーション共に問題ありません」
夜勤の看護師さんが理人の足に触れて脈を確認している。
その看護師さんが私に気付くと微笑んだ。
「…ずっとあなたの姿を探して、名前を呼んでいましたよ。
傍で顔を見せてあげてください」
看護師さんに背中を押され、私はやっと歩き出した。