ブルー時々、蒼。

目が合って、わたしは一瞬固まった。それから、全速力で走り出す。息継ぎも忘れ、無我夢中に夕方の風を切って、残暑厳しい初秋の道を。

青い空が、恋しい。


「純!あんたどこに行ってたの」


無意識で、元来た道をひたすら戻っていたわたしは、玄関の前のプランターに水をやるお母さんに見付かってしまった。


「喜代子姉さん帰っちゃったわよ?」
「ああ、そう…」
「こんなにいい条件が揃ったお見合いなんて、そうそう無いのよ?」
「、わかってるわ」


乱れた横髪を耳に掛けて俯くと、お母さんが朝顔に傾けるじょうろから出る水の上に、虹が架かっているのが見えた。


「喜代子姉さんが、おすすめのラウンジがあるからそこで会ってみたらどうか、って。ホテルの美味しいコーヒーが飲めるわよ」


じり、とスニーカーが小石を踏む音が聞こえて、振り向くと。「そ、蒼ちゃん……」いつもの無表情で、こちらに歩み寄る、蒼ちゃん。


「あら、蒼ちゃん。良かったらジュースでも飲んでってね」


お母さんは朗らかに言うと、プランターの脇にじょうろを置き、家の中へ入って行った。
< 12 / 15 >

この作品をシェア

pagetop