ブルー時々、蒼。
「蒼ちゃんは、赤が好きよね」
店先のベンチに、並んで腰掛ける。触れ合いそうな肩の距離を保つ。
相手は制服のシャツの裾を、だらしなく出しているから、小さな風に翻った。
「…嫌いだったら食わねぇだろ。」
アイスキャンディをくわえながらの、憎まれ口。
限りなく今更だけど、そして非常に残念なのだけど。彼はわたしに、さほどなついていないのかもしれない。
「わたしはやっぱ白が好き。小さい頃からずっと。このミルクみたいな、ヨーグルトみたいなさ、曖昧なところが好き」
軒先にぶら下がる風鈴が、心ばかり、涼しげな音を漏らす。
今日も、暑い。
どれほど暑いのかというと、アイスを一片かじっただけで、鼻息が凄まじく冷風になるくらい暑い。
だから、職場からまっすぐここに来た。
口の中でシャリシャリかじりながら、「…でもわたし、もしも青があれば、青が一番好きだわ、きっと。」アイスを持つ手をゆっくりと下ろし、膝の上に置く。
蜃気楼に、目を細めた瞬間「――っ!」油断して半開き状態のわたしの唇を、突然赤のアイスが撫でた。
彼曰く、「さっきから赤だの青だのうるせーから、食いたいのかと思った」らしい。