あのね、先生。-番外編-

「あー…んふふ」

「…なに?」

少し嬉しそうな蓮くんの声が聞こえて、そうかと思えばスッと離れて行って紙袋を持ち上げた。

「これか、嫌なの」

…すぐに見抜いちゃうから嫌なんだ。

不機嫌だった理由がバレたこととか、その理由がしょうもないことだったこととか、色々混ざって顔に熱が集まった。

きっと耳まで真っ赤だ。

そんなあたしを見て蓮くんは、いつもみたいにふにゃんと笑うと、今度は少し離れたところから「おいで」って言う。


「…手、汚れてるもん」

「洗えばいいでしょ?」

「…ご飯、出来てない」

「後でいいよ」

何だか何を言っても言い負かされそうな気がして、大人しく手を洗った。

だけど今更飛び込めるか。

あんな理由で蓮くんを拒否したっていうのに、素直に飛び込んでいけるほど可愛い女じゃない。
< 10 / 237 >

この作品をシェア

pagetop