あのね、先生。-番外編-
「あー…んふふ」
「…なに?」
少し嬉しそうな蓮くんの声が聞こえて、そうかと思えばスッと離れて行って紙袋を持ち上げた。
「これか、嫌なの」
…すぐに見抜いちゃうから嫌なんだ。
不機嫌だった理由がバレたこととか、その理由がしょうもないことだったこととか、色々混ざって顔に熱が集まった。
きっと耳まで真っ赤だ。
そんなあたしを見て蓮くんは、いつもみたいにふにゃんと笑うと、今度は少し離れたところから「おいで」って言う。
「…手、汚れてるもん」
「洗えばいいでしょ?」
「…ご飯、出来てない」
「後でいいよ」
何だか何を言っても言い負かされそうな気がして、大人しく手を洗った。
だけど今更飛び込めるか。
あんな理由で蓮くんを拒否したっていうのに、素直に飛び込んでいけるほど可愛い女じゃない。