あのね、先生。-番外編-

頷いたあたしを見て蓮くんは、腰に手を回して逃げられないように押さえる。

逃げ道を失ったあたしはというと、もうされるがままになるしかなくて。

「蓮くん…っ」

少し強引に重なった唇を受け入れるしかなかった。

何度してもドキドキする。きっとこの先も、慣れるなんてことはないと思う。

蓮くんとあたしとじゃ、経験値が全く違うわけで。キスですら、ついていくのがやっとだった。


「…ん」

エプロンが床に落ちたのが、足に当たったことで分かった。紐を解いたのなんて目の前にいる彼しかいない。

「…まだご飯出来てない」

出来てないどころか、まだ野菜を切り始めたばかりだ。第一段階だ。

だけど蓮くんはそんなのお構いなしにふにゃんと笑うと、あたしの両手を掴んで歩き出した。

「えっ…蓮くん聞いてたっ?」

全然、全く、聞いてない。
< 13 / 237 >

この作品をシェア

pagetop