あのね、先生。-番外編-
頷いたあたしを見て蓮くんは、腰に手を回して逃げられないように押さえる。
逃げ道を失ったあたしはというと、もうされるがままになるしかなくて。
「蓮くん…っ」
少し強引に重なった唇を受け入れるしかなかった。
何度してもドキドキする。きっとこの先も、慣れるなんてことはないと思う。
蓮くんとあたしとじゃ、経験値が全く違うわけで。キスですら、ついていくのがやっとだった。
「…ん」
エプロンが床に落ちたのが、足に当たったことで分かった。紐を解いたのなんて目の前にいる彼しかいない。
「…まだご飯出来てない」
出来てないどころか、まだ野菜を切り始めたばかりだ。第一段階だ。
だけど蓮くんはそんなのお構いなしにふにゃんと笑うと、あたしの両手を掴んで歩き出した。
「えっ…蓮くん聞いてたっ?」
全然、全く、聞いてない。