あのね、先生。-番外編-
失礼します、なんて言って吉野先生は自分の部屋に入っていった。
そっか、うまくいきそうなんだ。
俺の背中で眠ってるこの子は、きっと自分のことみたいに喜ぶんじゃないかな。
「茉央ちゃん」
「ん…」
ベッドに座って声をかけると、首元に巻き付いた腕に力が入った。
「茉央ちゃん、起きてる?」
「ん…蓮くん…」
少し緩くなった腕を外して向かい合うように振り向けば、眠そうに瞬きしてる茉央ちゃんが苦笑い。
「ごめん、寝ちゃってたんだ…」
「いいよ、全然。それより足大丈夫?」
ほんとに、よく怪我をする。
今日みたいに俺がそばにいて、すぐに治るような怪我ならまだいい。もちろんそんな怪我もしてほしくないけど。
一番怖いのは俺が知らないところで、大事に至る怪我をすることだ。
もう1年以上経ったけど、額の傷も手足の傷も、綺麗になくなったわけじゃない。
痕は残ってる。